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―――――それは、あるいっぴきのちいさなけもののものがたり
ある町のろじうらにいっぴきのちいさなけものがいました
ちいさなけものはこねこのすがたをしたばけものでした
ちいさなけものはつねにたえがたいいたみにくるしんでいました
いたみからのがれるために、ちいさなけものはいきものをころしそのくるしみをたべていました
そうすることでほんの少しのあいだだけ、ちいさなけもののいたみがらくになるのです
ですが、ちいさなけものはちからのよわいばけものでした
なのでちいさなけものはちいさなねずみや虫などのちいさな生き物をころしてはころしたちいさな生き物のくるしみをたべていました
ある日のことです
ちいさなけものはひとりの女の子とであいました
女の子はいいました。「なんてかわいいねこさん!」
猫が好きな女の子はちいさなけもののことをひとめできにいってしまいました
ですが、ちいさなけものにはその女の子がとてもおいしそうなごちそうに見えました
ですが、女の子はちからをもっていました
それはまだ女の子ほんにんもしらないちいさなちいさなちからでし
たが、とてもちからのよわいちいさなけものにはとてもかなうものではありませんでした
だから、ちいさなけものはこれまでよりもたくさんちいさな生き物をころしてころした生き物のくるしみをたくさんたべるようになりました
ちいさなけものは、ちいさなばけものは、生き物のくるしみをたべることによっていたみがらくになるのといっしょにちからをつけることができるのです
ちいさなけものがばけもので、じぶんをたべようとおもっているなんてちっともしらない女の子はまいにちけものにあいにきました
おんなのこはねこのえさになるようなものをもってきてはちいさなけものにあたえようとしましたがちいさなけものがそんなものをたべることはありませんでした
ミルクも、キャットフードも、かつおぶしやおさかなにだっててをだしません
でも、それはとうぜんのことでした
ちいさなけものはばけもので、ころしたいきもののくるしみしかたべないのですから
それから、きせつがひとつかわってあたたかくなってきたころのことです
まいにちちいさないのちをうばってきたちいさなけものは、ようやくちいさなちからをもつ女の子をころすだけのちからをてにいれました
ちいさなけものは女の子をころすために、もうだれもつかっていない古いたてものの中へ女の子をおびきだしました
そうすればだれにもじゃまされずに女の子をころせるとおもったからです
ですが、それはまちがいでした
ちいさなけものと女の子が入った古いたてものは、じつはべつのばけもののなわばりだったのです
ちいさなけものをおいかけてきた女の子が古いたてものにはいると、古いたてもののなかがぐにゃりとゆがんで女の子とちいさなけものをとじこめてしまいました
ゆがんだくうかんにとじこめられたちいさなけものと女の子の前に、古いたてものの中にいたばけものが立っていました
そのばけものはにんげんのようなかたちをしていましたが、顔とおもわれるばしょには目もはなもなく、とてもみにくいすがたをしていました
ばけものはみにくくただれた手にもったほうちょうをふりおろし、女の子におそいかかりました
女の子はおどろき、ちいさなけものをかかえてはしりだしました
ですが、女の子がいくらはしってもそこにはゆがんだくうかんしかありませんでした
しだいに女の子はつかれはて、とうとうはしれなくなりました
女の子がよわるのをまっていたばけものは、うごけなくなった女の子にむかってほうちょうをふりおろそうとしました
が、そのほうちょうは女の子にはとどきませんでした
ちいさなけものがばけものにおそいかかったからです
女の子をころしてたべたいとねがったちいさなけものは、えものをうばわれたくなかったのです
ちいさなけものはじぶんとおなじばけものにとびかかりました
ですが、ばけものはちからをつけたちいさなけものよりもずっとずっとつよいばけものでした
――――――ザスッ
ちいさなけもののきばが、つめが、ばけものにとどくよりもはやく、ばけもののほうちょうはちいさなけもののおなかをつらぬきました
たおれていくちいさなけものの目には、なみだとぜつぼうでいっぱいのひとみの女の子がうつりました
ああ、そんな顔をする女の子を食べたかったのに
ちいさなけものはおもいました
ちいさなけものがじぶんをかばってくれたとおもった女の子はちからをふりしぼってちいさなけものへとかけよりました
ですが、ちいさなけものにはもうおきあがるちからはありません
ちいさなけものはすこしずつひかりになってきえていきます
ですがきえていくしゅんかん、ふしぎなことにずっとずっとかんじていたいたみがまったくかんじられませんでした
そして、ちいさなけものはしずかにきえてなくなりました
「―――ナー…」
ばけものがこんどこそ女の子をころそうとほうちょうをふりおろしました
ばけもののほうちょうが女の子のしろいほっぺたをかすりました
「ガナーぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
そのときでした
女の子のなかのちからがめざめたのは
女の子はうたいました
それは、ばけものをけしさるうたでした
古いたてもののばけものよりもずっとつよいそのうたに、ばけものはくるしみついにはきえてなくなってしまいました
なにかがこわれるようなおととともに、まわりのくうかんがもとにもどりました
古いたてもののなか、そこにいたのは女の子だけでした
古いたてもののなかはすごくしずかでした
まるで、さっきまでたたかっていたばけものも、ちいさなけもののこともゆめであったかのようです
ですが、女の子のあしもとには女の子がもってきたてさげかばんがありました
そのなかにはあたらしいねこのえさのかんづめにねこじゃらし、ノミをとるブラシなど、女の子がちいさなけもののためによういしたものがつめこまれていました
ぜんぶゆめじゃない。そう女の子がおもったとたん、女の子の目からぽろぽろとおおつぶのなみだがこぼれました
女の子はちいさなけものにつけたなまえをよびました
へんじはかえってきません
そのはずでした
とつぜん、女の子がひかりにつつまれると、女の子のうでのなかにしろいもこもこのちいさなけものがあらわれました
しろいもこもこのけものは、女の子のほっぺたのきずにきがつくと、女の子をいたわるようにそのきずをぺろぺろとなめだしました
するとどうでしょう。女の子のほっぺたのきずがみるみるなおっていきます
女の子はうでのなかのしろいふわもこの顔をのぞきこみました
しろいふわもこはくりくりとしたつぶらなひとみで女の子をみつめかえします
女の子にはわかりました
これは、こねこのすがたをしていたちいさなけものなのだと
そして、これからはずっとちいさなけものと女の子はいっしょにいられるのだと
女の子とちいさなけもの――高井・春子とモーラットの物語はここからはじまった。
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